よき友をもとむべきは手習学文の友なり。悪友をのぞくべきは碁将棋笛尺八の友なり。是はしらずとも恥にはならず、ただいたづらに光陰を送らむよりはとなり、人の善悪みな友によるといふところなり

──北条早雲

この名言の背景

この条文は、『早雲寺殿廿一箇条』の第十七条に示される教えの原文全文です。戦国大名・北条早雲が定めたと伝わる家訓の一条で、武士の人間関係のあり方を具体的に説いています。

現代語訳すると「求めるべき良い友は、手習いや学問に励む友である。遠ざけるべき悪友は、碁・将棋・笛・尺八に興じる友である。こうした遊芸を知らなくても恥にはならない。ただ無駄に時間を過ごすよりはというものだ。人の善悪はみな友によって決まるというのはこのことだ」となります。

早雲はこの条文で、友人選びが人格形成に決定的な影響を与えると考えていました。武士としての信用や評価も、日常的に誰と交わるかで大きく左右されると見抜いていたのです。

朱に交われば赤くなる|戦国武将が説く人選びの重み

なぜ早雲はここまで友選びを重視したのでしょうか。人は周囲の人間関係に強く影響を受けるからです。

条文にはさらに「三人行時、かならず我が師あり、その善者を撰びて是にしたがふ、其よからざる者をば是をあらたむべし」という一文があり、『論語』の有名な一節を踏まえています。早雲が中国の古典にも通じていたことがわかります。

戦国武将は常に信頼できる仲間と結束して生き抜きました。誰を味方とするかで運命が分かれる時代だからこそ、日常の友人関係から慎重に選ぶ姿勢が重要だったのです。

この名言から学べること

この教えが示すのは、周囲の環境が自分を作るという真理です。どれほど強い意志を持っていても、毎日接する人々の価値観や行動パターンに影響を受けずにはいられません。

現代でも、成功したいなら既に成功している人と関わり、健康になりたいなら健康的な生活を送る人と付き合うべきだと言われます。早雲の教えは、その原理を500年前に明快に示していたのです。

友を選ぶことは、自分の未来を選ぶことと同じです。早雲のこの一条は、人間関係こそが人生を決める最重要要素であることを、簡潔かつ鋭く教えてくれる言葉なのです。