私は常に一つの目的を見据えてきた――すなわち、規律正しい教会音楽を、神の栄光のために導くことである。

バッハ

原文(出典原語):I have always kept one end in view, namely … to conduct a well-regulated church music to the honour of God.

この名言の背景

1730年10月28日、バッハは旧友ゲオルク・エルトマンに宛てた手紙の中でこの言葉を書きました。一次資料として『The Bach Reader: A Life of J. S. Bach in Letters and Documents』(Hans T. David and Arthur Mendel, 1945年、W.W. Norton社)に収録されている、最も信頼性の高いバッハ書簡の一つです。

当時45歳のバッハは、ライプツィヒの聖トーマス教会のカントル(音楽監督)として苦労の日々を送っていました。手紙では、市当局との対立、予算不足、才能のない生徒の増加などの不満を吐露した後、この一節で自らの志を再確認しています。

「well-regulated(規律正しい、秩序ある)」という言葉が鍵です。バッハは即興の閃きだけでなく、教会年に沿った規則正しい音楽の営みを大切にしました。毎週の礼拝のためのカンタータ、受難節の受難曲、祝祭日のミサ曲――体系的に組み上げられた音楽の秩序こそ、彼の志向でした。

志|苦境の中でも目的を見失わない力

この言葉が書かれた状況を思い浮かべてみましょう。バッハは日々の仕事に疲れ、市当局とは衝突し、生徒の質低下に悩んでいました。普通なら、この手紙は愚痴だけで終わるところです。

しかし彼は、苦境を並べた後で、改めて自分の志を言葉にしました。「私は常に一つの目的を見据えてきた」――この一文には、苦境に埋没しない精神の姿勢が表れています。目の前の困難は変わらなくても、遠くの目的を見失わなければ、自分は折れない。

バッハの生涯は、この姿勢で貫かれました。ライプツィヒでの25年間、数々の困難がありましたが、彼は毎週のカンタータを書き続け、受難曲を完成させ、弟子を育て続けました。目的の明確さが、日々の小さな挫折を乗り越える力になったのです。

この名言から学べること

日々の仕事に埋もれて、何のためにこれをやっているのか分からなくなることは誰にでもあります。そのとき、自分の「一つの目的」を改めて言葉にしてみること。

バッハは「規律正しい教会音楽を神の栄光のために」と言いました。私たちも、自分なりの一文で目的を表現できるでしょうか。「家族が安心して暮らせるように」「次世代に何かを残すために」「自分の好奇心を深めるために」――具体的な言葉が、日々の行動を支える背骨になります。